ザ・リストラ

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ザ・リストラ  

 このコーナーでは、先に15000人の人員削減を中心とするリストラを断行したNECが、さらに「構造改革」の名のもと次々に人減らしリストラを打ち出している真のねらいや、その口実にしている「NECの危機」の本質を解明、あくまでも労働者にしわ寄せを集中しようとする会社の横暴とこの攻撃を跳ね返す労働者の"元気”をこのホームページを訪れたあなたと一緒に作り出したいと思います。

NECの「リストラ掲示板」ここから
 

NECの経営危機は本当?  
赤字転落の責任はどこに?  
経営危機うそ?赤字転落=経営責任?それなら取るべき道はただひとつ  
労働者が取るべき道はただひとつ  
「15000人リストラ計画」-NECの言い分を切る PertT(PDFファイル18KB)    
マスコミが注目、NECの成果主義徹底!

 

NECの経営危機は本当?

本当に経営危機か?-この不況・業績悪化を絶好のチャンスとしてリストラをすすめる会社
 

(1)業績悪化で未曾有の危機感をあおる労使
 会社は、2月19日、「経営革新施策」と称して、15000人の人員整理を含む大リストラ計画を発表した。その契機となったのは、前代未聞の一大不祥事である「防衛庁背任事件」と一連の経営不振による大幅な業績悪化である。
 しかし、会社はこの業績悪化を千載一遇のチャンスとして、労働者に未曾有の犠牲を強いて、抜本的な体質改善、収益体質の強化を行おうとしている。
 「100年の歴史の中で、最大の危機に直面しているといっても過言ではありません。」(99年社長年頭あいさつ)と会社は、業績の悪化を理由に危機感をあおっている。幹部会議でも社長は、「危機感がどれだけ速く、どこまで浸透するかが、NECが立ち上がるか否かのキーである。」といっている。つまり、NECグループ全員にいかに会社が異常事態であるかを徹底し、この大リストラ計画を予定通り実施しようとしている。労働組合も春闘で「NECを取り巻く環境や業績は、創業以来ともいえる危機的状況にあります。」と会社の危機宣伝に呼応し、さらに、「『新生NEC』として活路を見いだしていくためには、強力なリーダーシップのもとNECグループ全従業員の力を結集して、『経営革新施策』を着実に実行し、経営目標を達成していく必要があります。」(第229回中央委員会議案)と述べ、現在のところ残念ながら会社の大リストラ計画を激励、応援する姿勢である。
 その他、創立100周年記念事業の延期、勤続30周年者の祝賀パーティの中止、運動会の中止、管理職以上の一時金カットなども危機意識の浸透のために行われている。更に労働者の危機意識を決定的に強めるため、タイミングをみ計らうように本社ビル(スーパータワー)の売却まで発表した。
    
    だが、本当に会社は危機だろうか?
   
 (2)決算状況-2000年3月期は800億円の経常利益(単独)を見込む
 たしかに前期の決算状況は、連結で見ると惨憺たるものだった。1579億円にものぼる巨額の赤字(最終損益)、(経常益は-2247億円)は、創業以来のものである。しかし内容を分析すると赤字の理由が明らかになる。その第一は、PBNECの業績不振による赤字と、従業員3000人の人員削減費用で800億円、恒常的に赤字が続いているNEC-HEの赤字が数百億円などであり、この2つが赤字の大半を占めている。
 単独ではどうだろうか。かろうじて、経常益は黒字になっているが、最終損益は-1402億円である。その主な原因は、それに防衛庁背任事件での入札停止や郵便機械談合事件による受注減で数百億円、それにパソコン不振と半導体不況などである。
 このように前期は業績の悪化は明白であるが、しかし、2000年3月期はもう大幅に収益を改善する計画である。連結でも、単独でも売り上げはのびないのに、利益は大幅に伸ばす計画である。
(来年3月期は、連結で当期益100億円、単独経常益900億円を予定)
「経営革新施策」では2001年度末には税引き前利益3000億円を見込んでいる。
 つまり、会社はこの業績悪化をてこにして、またチャンスとばかり、労働者に危機感を浸透させ、NECグループ全体の大リストラを決行し、人員を削減し、収益を伸ばす体質の強化をしようとしている。


 (3)内部留保は9550億円
 従業員には危機感をあおり、「明日にも会社が危ない」ように宣伝する一方で、会社のかくし利益=内部留保は年々積み増しし、9550億円、従業員ひとり当たり2300万円、グループ全体でも一人当たり700万円も溜め込んでいる。会社が未曾有の危機というのなら、今こそこの内部留保を使うべきではないか。
 

赤字転落の責任はどこに?


業績悪化の原因は?-労働者に責任はない


 業績の悪化の責任はいったい誰にあるのか?もちろん労働者にはない。


 (1)PB-NECなどの経営ミス
 西垣社長は、新聞のインタビューで「数字上は、アメリカのパソコン子会社パッカードベルNEC(PBNEC)の業績不振で、750億円の特別損失を計上するのが大きい。だが、それをカバーできないほど、会社全体の収益力が落ちているのが構造的要因だ。」と述べている。PB-NECの買収から始まった一連の経営不振は、当然経営陣の責任である。もうこれまで1800億円以上もPB-NECに資金を投入。ここまで経営悪化を放置してきた責任も当然経営陣にある。
 その他、ハードウエア中心からソフトウエア、SI事業、サービス事業への乗り遅れ、パーソナル事業(パソコン、プリンタ、モバイル端末等)の低迷、安易なOEM導入、基礎技術力の低下など、経営陣の経営判断の失敗も多く、これらは現状の業績不振だけでなく、将来のNECにとって、大問題である。

 (2)防衛庁背任事件等の一連の不祥事
 もうひとつ重大なのは、防衛庁背任事件などの大不祥事である。関本前会長を初め、上層部が多くかつ深く関与した一大汚職事件は、NTTや自治体の指名停止による受注減による業績不振だけでなく、NECのイメージを著しく落とし、従業員やその家族、株主に多大な迷惑をかけた。しかし、会社は、この不祥事の主な原因である官庁からの「天下り」の受け入れはやめようとしていない。また、役員人事も従来の「順送り」であり、上層部が責任をとったとはいえない。このように会社の上層部には事件に対する反省がない。経営陣は、この不祥事を究明し、再発防止のための抜本的な対策(天下りの受け入れ中止、政治献金の中止など)を至急行うべきである。

「経営危機」うそ? 赤字転落=経営責任?

      それなら取るべき道はただひとつ

 

15000人の人減らし計画は見直しを
  

 以上より、経営陣による経営ミスや業績不振、一連の不祥事の責任を曖昧にし、大不況の中での業績不 振をチャンスとばかり、労働者に犠牲を強いることは、とうてい容認できるものではない。
 すでに、PBNECジャパンの解散、NEC商品リース、日本電気精器の身売り、子会社の整理統合な どが行われ、NEC-HEも解体されようとしている。また、既に多くの事業場で、事業の再編・切り捨てなどで配転・出向の急増や派遣労働者、パートの首切りなどが行われている。
 今後、より一層、労働条件の切り下げ、早期退職勧奨、あるいは出向や解雇の強要が労働者に押しつけられる事が予想される。
 15000人を含む会社の大リストラ計画は以下のように不当であり、撤回あるいは大幅な見直しを求める。

 (1)人減らし計画を「業績改善のための施策」と位置づけ
 会社は、経営革新施策により平成13年度(2001年)度末には、売上高6兆円、税引き前利益3000億円など史上最高の業績を上げようとしている。これはとりもなおさず労働者の犠牲の上に、企業体質の強化、業績の急速な改善を行おうとしている。すでに一定の「リストラ効果」により、今期(2000年3月期)は単独経常利益800億円を見込み、急速な業績の回復を予想している。
 NECのリストラ策について株式市場は「今回のリストラ策は評価できる。大胆に人の削減に手をつけた点を評価している(ドイチェ証券日本株調査部佐藤ディレクタ)」と、人減らしによる再建策に期待を寄せている。しかし業績不振にはいっさい責任もない労働者に犠牲を強いる人減らしリストラは労働者にとってはとうてい納得できるものではない。

(2)大企業の社会的責任を放棄し、不況を長期化させるもの
 既に日立や東芝、三菱電機などの電機大手や日本の大企業がこの長引く不況の中で業績を急速に悪化させ、それを機に大幅なリストラ計画を発表している。しかし日本を代表するような大企業がそろって人減らし競争を行うと、その従業員だけでなく、膨大な下請け群の労働者の失業者の増大と労働条件の切り下げ、賃金の低下などで、消費の低迷、一層の不況の長期化をもたらす。日本全体の経済の建て直しのためには、消費不況の克服が最優先である。そのためには、消費税の引き下げと共に労働者の賃金の上昇など可処分所得の増加、将来の不安を解消する雇用の安定と年金、退職金制度の充実などが必要である。
 大企業が目先の利益、自己的な利益のためにこのようなリストラを行うことは、不況を長引かせ、長期的には日本の経済をだめにするものである。その意味でも、安易な人減らし、リストラを大企業は行うべきではない。

3)労働者の雇用と生活を守るのが、真の経営者
 人減らしで業績を立て直そうとするのは、一番安易な経営施策である。人を減らして固定費を削減すれば、経常収支を改善することができることはだれでも考えることである。しかし、一時的には収支が改善しても、優秀な人材の放出とそれによる業務停滞や技術継承の中断、残った労働者の労働意欲の喪失など、長い目で見れば失うものも多い。雇用を守らず、労働者の生活を守らなければ、NECの経営理念「NECはC&Cをとおして世界の人々が相互に理解を深め、人間性を十分発揮する豊かな社会の実現に貢献します。」や経営指針「・社員の個性を伸ばし、十分発揮させる。」にも反する。労働者が安心して働け、労働条件の改善などでいきいき仕事できる環境をつくることが経営者の責任である。そうしてはじめて、企業の社会的責任と将来を見通した経営となる。
 人減らしを先行させて、安易に経営を立て直そうとするやり方では大企業の経営者の資格はない。

労働者が取るべき道はただひとつ

「会社が危機だから仕方ない」などと思っていたら生活は守れない
  

 1項で述べたように、未曾有の危機宣伝をマスコミも使い、会社が行うことによって、労働者の中には、 前述のように「業績が悪いから、春闘も一時金も上がらなくても仕方ない」「もらえるだけいいほうだ」 とか、「会社が危機の時、賃上げや一時金アップなどいっていられない。首にならないだけまし」との声 が一般的に出がちである。
  しかし、会社の危機宣伝に取り込まれ、諦めていたら、生活は守れないことは明らかである。
  第一に自分の雇用があぶない。また、解雇されなくても下請けや別会社への出向、労働条件の切り下  げ、賃金や一時金の切り下げが行われた場合、中高年は、住宅ローンの返済、子どもの教育費の支払いが 困難になるし、若年層にとっても将来の生活設計が成り立たなくなる。
  自らの生活と働く権利、労働条件を守るためには、NEC社員だけでなく、全労働者が団結して、まず 会社の「経営危機」宣伝をうち破りることである。
  そしてどうしたら雇用を守り、賃金・労働条件を向上させながらNECが発展できるのか全労働者で考えていくべきではないだろうか。

 


マスコミが注目、NECの成果主義徹底!


現在、労使委員で構成するワークシステム検討委員会で論議されている「新人事処遇制度」について、マスコミが注目しています。

多くの問題があるものの、長い労働運動の結果築きあげてきた、現在の賃金処遇制度は家族を含めた生活給としての性格をもち一定の安定を保障している制度です。これを根底から崩そうというのがこの新人事処遇制度ですが、制度の是非をここでは問わず、各社の報道内容を紹介します。

1月16日 朝日新聞「成さざる社員、定期昇給ゼロ」
1月18日 しんぶん赤旗「成果重視」賃金 非管理職に導入へNEC
1月26日 夕刊フジ 日産、日興証、NEC、三洋電 給与恐怖革命
2月5日号  週刊現代 NECから2000年「ニッポン給料革命」が始まった



成さざる社員、定期昇給ゼロ −朝日新聞(1/16付)

NEC徹底的成果主義
 「NECは10月から労働組合員を対象に、定期昇給から年功的な要素を排し、成果主義を徹底した賃金制度を導入する。事務や研究などに携わる約29000人のホワイトカラーが対象で、成果に応じて昇給額は、ゼロから標準昇給額の最大2.5倍まで差がつく。同時に組合員を職種・資格(等級)ごとに数百に細分化し、昇給・昇格の際に成果や能力をきめ細かく評価する制度を盛り込む。」として、すでに会社が労働組合と基本合意していることを明らかにしています。さらにはすでに成果主義を取り入れている企業に多くが一時金で差を付けているのに比べ、NECの例は月給のアップ額で大きな差を付ける制度になっており、そのねらいが、NEC本体の95%を占めるホワイトカラーの生産性を評価することにあるとして、「期待される成果が上がらない場合、降格もありうる」と報道しています。




「成果重視」の賃金 非管理職に導入へNEC −しんぶん赤旗(1/18付)−

 「NECは17日、非管理職の賃金体系について、年功序列制を廃し、成果を重視する新制度を10月に導入することで、労働組合と基本合意したと発表しました。新制度では、場合によっては昇給がゼロに近くなるほか、標準昇給額より最大で2.5倍の格差が生じるといいます。」として新制度の内容を紹介しています。



日産、日興証、NEC、三洋電 給与恐怖革命 −夕刊フジ(1/26付)

 「景気回復がはっきりしない中、今春闘で経営者側が「雇用優先、人件費削減」を崩さず、労働者側に強い姿勢で臨んでいる。一方で、日本を代表する大企業の賃金制度の見直しがゾクゾクと明らかになり、今年は働くものに厳しい”賃金革命”が一段と進む見通し。」として日産、日興証券に続いてNECが登場「数少ない成長分野の情報通信の大手企業でも制度の見直しは急だ。NECは、今年10月に非管理職を対象に年功序列を廃し、成果重視に切り替える。管理職対象には6年前から成果に基づいた年俸制を導入しているが、今回は約29000人の非管理職にも拡大する。」と報道しています。



NECから2000年「ニッポン給料革命」が始まった −週間現代(2/5号)

NECは「完全成果主義」を導入
 「これまで横並びだった社員間の年収格差が、大きく開きはじめている。成果主義による「能率給」がその要因だ。企業が「年齢給」を撤廃する動きもサラリーマンを痛撃し、、今後は人生設計もままならない”冬の時代”に突入する。着実に進む「給料革命」は、いったいだれを幸福にするのか」としてNECを中心に5ページにわたる特集を組んでいます。読んでたいへんわかりやすい記事です。


「社員の生活給までいじるな」
 「サラリーマンの給与観を根底から覆すような新賃金制度が、NECから発表された、全社員について、ベア・定期昇給の核となってきた「年齢給」を撤廃し、完全成果主義で昇給率を決めていくというのである。」これに対し日本労働研究機構の伊藤主任研究員の「企業が生活給をいじるのは、非常に危険な行為です。社員にしてみれば、基本給部分が変動的なものになると、長期的な収入予測がつかなくなり、人生設計がまったく立たなくなる。社員の志気の混迷は必至で、企業の命運を分けることにもなると思います」の言葉を載せている。


 ここで社員の不安をあおりかねない年齢給廃止に踏み切った理由と新制度の内容をNEC広報部の説明として紹介している。それによると対象がホワイトカラー(組合員)2万9000人。これをエンジニアなどのA職群(1〜3級)と情報管理や事務などのB職群(1〜6級)に区分し、それぞれの職種・資格に応じた成果判定の基準を定め、それに基づいて昇給額をきめるということで、年功的な定昇などは一切廃される。その結果、A職群では標準額の0〜2.5倍、B職群では0.3倍〜1.6倍の格差がつくとしている。そこで特集は新卒者2人を対象に、一方が標準昇給、もう一方が2.5倍の昇給をした場合の10年後の差をシミュレーションしている。


「厳しすぎる・・・」とNEC社員
 その結果、基本給ベースでなんと1.7倍の格差が出ることが判明した。
 この新賃金制度へのNEC社員の声を紹介している。
 ある中堅社員は「新制度についてはしんぶんで報じられただけで、まだ会社から具体的な説明はありません。組合からは社内メールで簡単な説明がありましたが、社内では不安の声も上がっています。今回の新制度は一定の年数以上勤めた社員にとっては、ものすごく厳しい制度改定です。特に現行の管理職選抜試験が残ったまま制度が変更されると、いちばん苦しいのは、管理職になる見込みがない30歳代なかばの平社員です。ポストがなくても、年功でカバーされるということがなくなるわけですから・・・・」(30代営業職)。別の社員は評価基準への不安を訴えています「例えば海外事業部の北米や欧州担当とロシア担当では、実績の比べようがない。単なる数字の争いになったら、ロシア担当は絶対に太刀打ちできませんよ。そのへんをどうやって査定するのか。実力評価というが、どうやって人を評価するのか」(30代中堅管理職)


 その後、成果主義を部分的に採用している他の企業を紹介しながら、各企業が「成果主義」導入にしゃにむに走る原因を分析している。
 先の伊藤氏は「会計法が改正されて、2001年3月期から『企業年金積み立て不足金』が企業債務として計上されることになった。その準備を進めるなか、各企業は、自社の不足金の実態を初めて認識し、青ざめたんです。それでここ数年、賃金制度の変更が続出しだした」といっている。企業年金積み立て不足金は全体で60兆円〜80兆円との試算があり、これが企業債務となれば、企業の社会的評価の低下はまぬがれない。そこで賃金制度を経営サイドに有利になるように改定している。としてズバリ「成果主義」の本質を指摘している。これは経営団体の一つである日経連の2000年1月のレポート『労働問題研究委員会報告』にも明確に≪積み立て不足が深刻な問題となっている。・・・我が国の企業年金は退職金制度から移行したものが多いが、企業年金改革の推進を機に、長期勤続を前提とする退職金が必要か、現行の支給水準を維持できるかなどの基本的な問題について、労使で真剣に検討することが求められる≫と記載されている。


「バルブ入社組の整理が狙い」
 またもう一つの原因として”バブル”社員の存在をあげています。「どの企業もバブル期入社の問題には頭を抱えています。社員数では、団塊の世代よりも多い。これを整理しないと大変なことになる。そこで、いまのうちに成果主義などを導入して、会社に貢献のあった社員には高給を払って残ってもらい、あとは辞めててもらうか、安月給で済ますというような賃金調整のできる仕組みに移行し始めているんです」と経済アナリストの森永氏の言葉を紹介しています。


もう人生設計どころではない
 そして企業のご都合主義で進めている「成果主義」の新システムの大きな問題点を強く指摘しています。先の伊藤氏は「アメリカというと日本以上の成果主義と思われがちですが、実は職種によって綿密な基本給(職務給)が、市場評価にそって設定されているんです。つまり、基本給で、社員が生活できる最低限の保障額がまかなわれている。日本もこうした制度にならないと、社員が人生設計も立てられないような、非常に不安定な給与制度で終わってしまう恐れがある」と指摘しています。
 そしてすでに成果主義を導入した富士通の実態を社員は「成果主義導入で一番大きかったのは残業です。以前は残業が給与についていましたが、出勤時間も退社時間も自由な制度にしてから、残業代がなくなりました。でも成果を上げようとすれば働く時間は以前より増えざるを得ない。生活はとても苦しくなった。実績給といったって、いつも実績を上げ続けることなど無理だし、会社の体力を考えればもらえる額が減っていくのは間違いない。大きなローンは組めないし、どう人生プランを立てろというのか、という気持ちでいっぱいですよ」と語っています。
 NEC社員の嘆きも紹介しています「成果主義というと聞こえはいいが、社内の給料原資が増えるわけじゃない。それどころか、前と同じか抑える方向にあるわけですから、実際には決まったパイの取り合い、奪い合いですよ。会社の手のひらで踊らされて、モーレツ時代の社員のように馬車馬のように働かされるんだから、ミジメな話です」


 職場の空気の変化を甲南大学の熊沢教授は「従来なら誰かが休めば代わりの者がカバーするとか、そうした空気があったものが、次第になくなっていくでしょうね。職場がギスギスしていく。また、少しでも成績を上げようとするから、かえって労働時間は長くなる。にもかかわらず、実際には成果も上がらず昇給もないといった人のほうが、ずっと多くなっていくはずです」と指摘しています。
 先の森永氏は「勝ち組と負け組の割合は半々ぐらいだろうと考えている人が多いでしょうが、そんな甘いものではない。中流がなくなり、サラリーマンの9割は貧乏人になり、1割が金持ちになっていくんです」と厳しく指摘しています。

 まとめに「成果主義の導入は、サラリーマンを一部のエリート層と大多数の貧困層に分けていく。成果を少しでも上げようと、だれもが猛烈な労働を強いられることになる。サラリーマンの人生が激変するのは必至である。」と安易に「成果主義っていいじゃん」と考えているサラリーマンに警告の鐘をならしている。

21世紀の企業のあり方とは?と真剣に考えさせられた記事でした。