2008春闘の結果について

NEC&関連労働者ネットワーク の見解


2008年4月6日

 

 2007年11月から2008年1月にかけて実施した電機懇および労働者ネットワークの春闘アンケートによると「生活が苦しい」が過半数を超え、賃上げ要求「3万円以上」が80%を超えるなど、切実な要求が渦巻いていた中でたたかわれた08春闘。その結果 について、特に賃上げと処遇改善、子育て支援を中心にNEC&関連労働者ネットワークの見解を発表する。

 

1,賃上げーこの超低額回答は、とうてい受け入れられない
(春闘の情勢)

 金融機関の「投機マネー」の暴走による原油価格の高騰、それによる諸物価の相次ぐ大幅値上げが行われた最中の春闘だけに、賃上げはより切実なものになっていた。一方、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融不安と株安、円高の進行で、景気減速が懸念され、それを口実にした財界・経営側の賃上げ抑止論が急速に強まった。。

 しかし、これまで電機大手が過去最高の利益を上げ、異例ともいえる内閣総理大臣の日本経団連会長への賃上げ要請もあり、また、マスメディアもこぞって「賃上げが景気を回復させる」との論評を掲げ、労働者の中にも賃上げへの期待は高まっていた。

NEC労組はこのような状況と電機連合の方針を受け、「2000円以上」の賃上げ目標を掲げた。(会社申し入れ:2/13、回答:3/12)

これに対して会社は「減収や同業と比べて状況が厳しい」「グローバル競争の観点から総額人件費増加には慎重な対応が必要」と賃上げを渋った。(ただし、円高問題についてはNECをはじめ大企業は前回の円高の教訓を踏まえ、「円建て」契約など円高対策を織り込み済みであり、その影響は大きくはないとしている。)

(会社回答)

 3/12の一斉回答でNECは、「要求ポイント(A職群2級・成績標準)で1000円水準改善」という超低額回答となった。

 成果主義賃金によりこの賃上げ額は一律ではなく、中高年はさらに少なく、ゼロ回答に等しいものであり、労働者の要求・期待にまったく応えていない回答である。

 また、近年、大量の定年退職者があり、賃金原資、賃金コストが大幅に減少しているにも関わらず、たった1000円の賃上げ回答は、労働者に対してまったく誠意がみられないものである。

 したがって、会社の賃上げ回答はとうてい受け入れられるものではない。

 

2.処遇改善ー職場の要求を一定反映した回答だが、雇用延長制度は依然として電機で最低・最悪。さらなる改善が急務

 今年の春闘ではNEC労組は、職場の切実な声を一定取り上げた56歳からの特別取扱の撤廃や雇用延長制度の見直しの要求をかかげた。その要求に対して会社は「人件費インパクトを考えると困難」といい、雇用延長見直しについては「現行制度は世間との比較では大きく見劣っておらず、人件費面からも対応困難」と臆面もなくいっていた。しかし、NECの雇用延長制度は、電機大手と比べてみたら最低最悪の条件であり、会社の主張は、逆に職場も怒りをかった。

(会社回答)

(1)56歳からの特別扱いの撤廃

56歳からの特別取扱は撤廃され、「昇給およびVワークの適用に関しては55歳以下と同様とする」との回答であった。この56歳からの特別取扱は年齢差別であり、NECの順法精神や行動憲章にも反するという我々の主張や職場の要求が反映されたものであり、今春闘の重要な成果である。

 

(2)雇用延長制度の見直し

 雇用延長制度についての会社回答は以下の通り。

 厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢繰り延べに併せ、制度適用年齢を対象者の生年月日に応じて以下の通りとする。(現年齢は2008年4月1日時点)

   対象者生年月日             適用年齢

1953年4月1日生まれ以前(現55歳)    56歳

1953年4月2日〜1955年4月1日生まれ

(現54歳〜53歳)              57歳

1955年4月2日〜1957年4月1日生まれ  

(現52歳〜51歳)              58歳

1957年4月2日〜1959年4月1日生まれ

(現51歳〜49歳)              59歳

1959年4月2日生まれ以降

(現48歳)                  60歳

 

という回答であった。

 このNECの雇用延長制度は、職場でも「NECの制度はとても選択できないひどい制度だ」との声が多く、また我々が電機の他社比較で「最低・最悪の制度」と指摘し、強く改善を求めてきたものである。

 今回の回答は、この切実な要求を一定反映したものである。

 しかし、電機と同水準(電機大手の大勢が59歳選択)と同じになるのは、10〜11年後である。ただちに「59歳時点での雇用延長選択」にすべきである。また、詐欺のような適用年齢からの2割の賃金カットの廃止、60歳からの年収の極端な低下(55歳時点の40%の年収:他社より減少幅が大きい)の縮小は今回の回答には含まれていない。従ってNECの雇用延長制度は依然として「電機で最低・最悪の制度」であることに変わりはない。

 誰もが安心して働き、生活できるための雇用延長は、企業の社会的責任であり、豊富な経験がある中高年を雇用することは、技術力を維持・継承するためにNECおよび関連会社にとっても非常にメリットがあるものである。

 従って、ただちに59歳での選択、60歳からの賃金ダウン幅の縮小を図るべきである。

 また、NECフィールディングやNEC真空硝子では、雇用延長の選択可能条件を「標準成績以上」とする規定がある。これは「高齢者が意欲と能力のある限り働く続ける環境を整備する」という高齢者雇用安定法の趣旨に反する規定であり、希望する 誰でもが雇用延長制度を選択できるようにすることが必要である。

 

3,子育て支援などー一定前進したが、さらなる改善が必要

 配偶者の転勤や育児・介護の事由による退職者の再雇用制度の導入は、雇用事情の悪化の環境下で注目されていたが、回答は以下のように対象者、再雇用の要件が非常に厳しく、限定された適用となっている。

・対象者の要件:勤続3年以上で、配偶者の転勤や育児・介護を理由に退職し、   
        且つ退職時に登録した者が、退職後5年以内に申し出た場合

・再雇用の要件:本人の能力、意欲、適性、健康状態等を確認した上で、NE
                C及びグループ内の関係会社等の雇用ニーズと本人希望が合 
                致した場合

 本人が再雇用を希望すれば、基本的には誰でも雇用するように改善するべきである。  

以 上

           

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