これでは将来の生活設計ができない-NECの中高年の生活破壊施策-
 管理職の「56歳定年制」と定年延長制度の改定提案


NECはCSRをまじめに考えるのなら
管理職の「56歳定年制」の廃止と
生活でき、安心して働ける雇用延長を

2005年11月 NEC労働者懇談会

 

はじめに

 今、NECでは中高年労働者に対して、相次いで雇用の不安定化、賃金の大幅低下の攻撃がかけられています。2005年10月から実施された管理職の「56歳定年制」と2006年4月からの実施をねらい組合に提案している「雇用延長」の名による賃金の大幅引き下げなどです。

 「2007年問題」がクローズアップされ、また年金の支給年齢の引き上げなどで、雇用の延長が社会的要請になる中、政府は60歳以上の雇用延長を図るべく、高齢者雇用延長制度 を改正しました。ところがNECはこの社会的要請に逆行するばかりか、法律改訂に乗じて法の悪用までしようとしています。

 

1、管理職の「56歳定年制」

  一大幅賃金ダウンと1年契約による雇用の不安定化

1.1 概 要

 NECは「56歳到達の管理職にはその職責を後輩に譲り、一層の後進への指導・育成の強化に加えて、専門性の継承を行う」として、管理職の「56歳定年制」ともいうべき「専任エキスパート制」の新設など、雇用の不安定化と賃金の大幅ダウンを、2005年5月連休明けに提案し、2005年10月から実施しました。

1.2 内 容

「56歳定年制」は以下のいずれかを選択。

 1)専任エキスパート(1年契約)(新設)
 2)関連会社への移籍
 3)セカンドキャリアの選択(1年間)

【専任エキスパート制の新設】

 (1)従業員区分の変更

    56歳に達した社内に在籍している役割グレード者は、原則として「専任エキスパート」         とする。契約期間は1年。更新は最長60歳まで可能とする。

 (2)報酬

    専任エキスパートとして新たにアサインされた業務に基づき月収および業績賞与基準額を個別に設定する。(賃金は現状より約3割カットとなる)

 (3)評価

    個々人の業績評価を実施し、賞与に反映する。賞与基準額については、原則として全社業績、部門業績は反映しない。

 (4)勤務

    週休3日制を選択できる。

 (5)社会保障

    継続加入する。

 (6)退職金

    56歳時点では退職金は支給せず、専任エキスパート契約終了時に支給する。

 (7)その他

    その他については、現行通り(従業員就業規則による)とする。

 

1.3 NECのねらいと問題点

 NECのこの施策の主なねらいは、ずばり「団塊の世代」の人件費の削減です。従って、60歳まで待たず、56歳から大幅な賃金ダウンと、1年契約の不安定雇用により、管理者同士に成果を競わせ、戦力として使用することも合わせてねらっています。

このことにより、以下のような問題が発生すると考えます。

 1)住宅ローンや子どもの教育費などの一番かかる世代の賃金大幅ダウンは、生活レベルを切り下げざるを得ず、生活設計が成り立たなくなる。

 2)雇用の不安定化により、今後の生活設計ができなくなる。

 3)賃金を大幅に削減し、雇用を不安定にすることにより、管理職のやる気をなくし、会社にとっても長期的には有害な施策である。

職場では、「人は減らされ、仕事は増えているのに、給料も大幅カットなんて頭に来るよ」とか、「給料を3割カットするのなら仕事も3割カットだ」「今までの仕事のがんばりは何だったのか?もう首にならない程度にのんびりやるよ」など、怒りの声が出ています。

    

 

1.4 NEC労働者懇談会の提案

管理職といっても、上司(部長、事業部長、本部長など)の指示に従い、みっちりスケジュール管理され働く雇用労働者に変わりなく、会社の一方的な賃金・労働条件の切り下げは許されません。

 また、現在の管理職層は「団塊の世代」として、会社の発展に貢献してきた世代です。今のNECがあるのもこの年齢層の日夜を分かたず必死で頑張った労働があったためといっても過言ではありません。

この管理職にこのようなひどい仕打ちは許されません。以下のことを提案します。

 
1)「56歳定年制」は、廃止し、希望者には全員65歳までの雇用延長を
 2)56歳からの賃金ダウンをやめ、将来の生活設計のできる生計費原則による賃金制度を
 3)「2007年問題」を解決できる貴重な年代である「団塊の世代」は会社にとって も、重要な労働力のはずです。その誇りと技術力で会社に断固とした態度をとろう。雇用契約解消などの攻撃に対しては、NEC労働者懇談会、電機労働者懇談会、「電機ユニオン」などに相談し、また電機ユニオンに入り、会社と対等な立場でたたかい、生活と雇用を守ろう。

 

 

2.組合員の「雇用延長制度」改定提案

 一56歳以降大幅賃金カット、60歳以降はほとんどただ働きに

2.1 概 要

 NECは「主任以下について、原則希望者全員を対象にして、現行の年齢選択コースの拡充により雇用延長を行う」として、第48回ワークシステム検討委員会において「60歳以降の雇用延長制度」の見直しについて提案しました。NECは今後の労使の協議を経て、2006年4月から実施する計画です。

 

2.2 内 容

現在の以下の3つの雇用延長制度の中の「年齢選択コース」を改訂するとしています。

(1)個別契約コース(60歳以降、仕事毎の市場賃金ベースで個別に1年毎雇用契約)
 (2)年齢選択コース
 (3)セカンドキャリアコース(58歳から社外求人による転進またはセカンドキャリア支援制度  を利用した独立・転進

 

【従来の年齢選択コースの概要

・56歳から「雇用延長コース社員」となり、賃金は選択時の月収の70%プラス一時金100%。

・60歳からは「選択年齢に応じた期間の雇用契約」となり、賃金は選択時月収の50%、一時金なし。

【今回提案の年齢選択コースの概要】

1.対象者の基準と適用制度

 主任以下について、原則希望者全員を対象にして、現行の「年齢選択型コース」の拡充により雇用延長を行う。

 対象者の基準については、会社が提示する労働条件および業務で雇用延長を希望する者でかつ55歳時点で以下の条件をすべて満たすもの(選択時期は55歳時点のみ)

 ・直近過去2回の人事考課がいずれも標準以上であること(標準昇給額以上)
 ・直近過去2回の一時金の個人成績分がいずれも標準額以上
 ・勤務に支障がない健康状態

 

2.主な労働条件

(1)賃金

  ・56歳から60歳まで:56歳到達時点の月収の70%と70%の一時金(個人業績評価あり)(これに対して労組は「55歳時点の年収の80%以上」を主張 ) 

   ・60歳から65歳まで:56歳到達時点の月収の45%と60歳以降の月収の0.7ヶ月相当分の一時金(個人業績評価により支給) (これに対して労組は「55歳時点の年収の40%以上」を主張)

(2)従業員区分:

  ・56歳から60歳まで:雇用延長社員
  ・60歳から65歳まで:再雇用を締結し、毎年更新

(3)従事業務

   通常の人事異動による(会社が指定する業務に従事する)

(4)勤務取り扱いの決定

   原則として社員と同一とし、所定就業時間は7時間45分とする。(短時間勤務や隔日勤務は、職場マネジメント上の負担も大きく、業務上の支障が生じる場合もあり、原則として実施しない)

(5)その他の労働条件

 ・56歳から60歳まで:現行通り
  ・60歳から65歳まで:現行通り(現行の年齢選択コースにおける60歳以降の労働条件による)

3.56歳以上、出向者の取り扱い

 (1)今年度56歳以上の者への対応

    制度適用は2006年4月からで、条件は上記と同じ

 (2)出向者の取り扱い

    55歳時点でグループ各社に出向中のものは、原則として出向先に移籍した上で雇用延長を行う。

 

2.3 NECのねらいと問題点

   NECのねらいは、管理職の「56歳定年制」と同じく、「団塊の世代」の人件費の削減です。また、「雇用延長」は「団塊の世代」がいっせいに退職して顕著になる「技術の空洞化」に対処するねらいもあります。

NECの「雇用延長」は60歳まで待たず、56歳から大幅な賃金ダウンと、「雇用延長」の美名のもと60歳からは更に低賃金(ほとんどただ働き)で働かせるものです。「年齢選択型コース」では、56歳の時点の年収が700万円の人は、56歳から60歳までは年収490万円、60歳からは年収250万円程度(月19万円)と高卒新入社員並の給料になります。しかも56歳から60歳までの減額(積み立てともいえる)分を差し引くと、年収は90万円弱、月収ではたった7万円程度です。 ここに「ほとんどただ働き」と指摘した理由があります。

さらに、60歳以降「自己都合」で退職した場合は、56歳から60歳までの減額(積み立て)分は戻ってこないため、丸損になります。その上、国から会社には、「継続雇用制度奨励金」が出ます。(労働者には職安に申請することにより「高年齢雇用継続給付(60歳以降の賃金の15%相当)」が支給されます。)

このように会社提案は、今後の物価上昇や税負担増などを考慮すると60歳以降はほとんどただ働きになります。これは、「雇用延長」の美名にかくれて、中高年の従業員をただ同然で働かせ、丸儲けするねらいがあるのではないでしょうか。

これでは「雇用延長制度」の悪用であり、まるで詐欺行為ではありませんか。

この提案では、以下の問題が発生すると考えます。

 1)住宅ローンや子どもの教育費などの一番かかる世代の賃金大幅ダウンは、生活できなくなり、生活設計が成り立たなくなる。

 2)雇用の不安定化により、今後の生活設計ができなくなる。

 3)60歳以降の賃金は高卒新入社員並みの超低賃金であり、生活できない。

  会社は「年金や高齢者雇用継続給付金を合わせれば、60歳以降も56〜59歳とほぼ同等の年収水準となる」といっていますが、これは、昭和24年生まれの人を対象にしているものであり、昭和36年4月2日以降に生まれた人は、厚生年金の基礎年金「定額部分」はもとより、「報酬比例」部分も65歳になるまでは支給されないため、本当に生活できなくなります。(その前に生まれた人も年金の報酬比例部分は支給開始年齢が遅らされる)(従って、収入は一時金を年金として受け取るわずかな部分等とこの超低賃金分だけになる)だいたい、年金部分や国から出る高年齢雇用継続給付金を給料の一部のように見せかける会社のシミュレーションのやり方には問題があるのではないでしょうか。

4)賃金を大幅に削減し、雇用を不安定にすることにより、労働者のやる気をなくし、会社にとっても長期的には有害な施策である。

 職場では、「雇用延長と聞いて、いい制度と思ったが、中身を知ってこれはひどい。使えない制度とわかった」「ただ働きさせるなんて馬鹿にしているよ」「会社もよくこんなこと、考えつくよな。まるで詐欺じゃないか」「原則希望者全員といいながら、標準以上の評価が雇用延長の条件というのは矛盾している」「こんなひどい提案、まさか組合は賛成しないよね」との怒りの声が続出しています。

           

 

2.4 NEC労働者懇談会の提案

 現在の中高年層は「団塊の世代」として、会社の発展に貢献してきた世代です。今のNECがあるのもこの年齢層の身を削った必死の労働があったためといっても過言ではありません。

この労働者にこのようなひどい仕打ちは絶対許されません。また、このような制度を作ってしまうと、将来利用する労働者に対しても禍根を残し、不利益を与えることになります。

以下のことを提案します。
1)56歳からの賃金ダウンをやめ、将来の生活設計のできる生計費原則による賃金制度を
2)法律の精神にそって、希望者は全員条件なく65歳まで雇用を延長する
3)60歳以降の賃金も国からの補助を賃金には含まず、生計費に基づいた生活できる賃金とする
4)「2007年問題」を解決できる貴重な年代である「団塊の世代」は会社にとっても、重要な労働力のはずです。その誇りと技術力で会社に断固とした態度をとろう。退職強要やその他の不利益攻撃については、NEC労働者懇談会、電機労働者懇談会、「電機ユニオン」などに相談し、会社と対等な立場でたたかい、生活と雇用を守ろう。

            

電機ユニオンの連絡先: TEL 03-3455-6006  FAX 03-3451-3595

                  メール info@denki-union.org

         URL: http://denki-union.org 

 

 
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