NECフィールディング 1000名リストラ攻撃の闘いを振り返る

2005年4月30日 NEC労働者懇談会

 

 2004年11月に始まった、NECフィールディングの1000名にものぼる労働者へのリストラ攻撃は、2月25日の「早期退職募集締め切り」をもってひとまず区切りがつけられました。
この間の会社の労働者への攻撃に対して、NEC労働者懇談会が行った活動を踏まえて、総括をしてみたいと思います。

■首都圏4拠点にビラ入れ
 今回の中高年を狙いにしたリストラの対象者は、全国で1600名に及び、影響は甚大です(一般職・管理職の比率は半々)。肝心の労働組合が受け入れてしまったため、残された手段は数えるしかありません。そこで多くの人に、その不合理と対処法を指し示して会社を辞めないよう訴える情宣活動を大々的に行うことにしました。
 昨年11月から今年にかけ、首都圏の主要4拠点と駅頭で延べ5回に亘ってビラ入れとマイクや立看板を併用した訴えを実施しました。ことがことだけに、ビラは飛ぶようにフィールディングの職場に持ち込まれていきました。今年の本社前でのビラ入れでは行列ができるほどで、その光景に会社はさぞかし気が気ではなかったことでしょう(参加者談「ビラを撒く私の前に受け取る人たちの行列ができたのは初めての経験でした。何か熱いものがこみ上げてきました」)。
ここでビラのタイトルを紹介します。

『声をあげ、力をあわせて大リストラ案をストップさせよう!(11月号)』
『やめません!わたしは会社に残ります!(12月号)』
『レッドカード!退職強要は止めなさい!短期は損気!辞めないのが一番です!(2月号)』。
ビラには相談窓口と専用のホームページのアドレス(http://www.elicnec.com)を掲載しました。

■会社、目標数字に四苦八苦
 会社が打ち出した1000名規模のリストラは、主に3つから成っています。
 @内工化で外注500名削減、
 A早期退職で200名削減、
 B新会社へ250名転籍削減、
 2005年度に業績のV字回復を公約して打ち出した前述の「経営・人事改革」で組合の同意が得られたことで会社は、安心したことでしょう。それだけに今回の「リストラ反対」行動は、相当な衝撃と危惧をもって迎えられたことでしょう。
 事実、人員削減が難しくなったとみた会社は、新たに設立する人材派遣会社への転籍について見直しを行いました。当初、勤務場所は京浜と関西の2地区としていたのを東北・中部・九州まで拡大して単身赴任や地方出身者の取り込みを計るとともに、職種も拡大しました。さらに集まりが思うようにならなかったとみえ、会社は2次募集に踏み切り目標の250名に近づけようとしました。
 しかし結果は、大幅未達の62名に終わりました。 後程触れますが、ここまでこぎつけるのにも、ターゲットにされた人への執拗なまでの退職・転籍強要がありました。

■あちこちで退職強要
 組合が昨年11月末に人員削減策の受け入れを決定すると、会社は直ちに個人面談を始めました。建前は、個々人の進路について話し合う中で退職・転籍に応じる意思があるかを確認するためということでした。しかし実際には、辞めさせることが目的であったために緩やかなものではありませんでした。対象者が少ない職場では、特にひどいものでした。 やり口は、面談を2回3回と執拗に繰り返し、時として人前で恥をかかせるなど人格を傷つけたりしました。断り続けたある人は、「トイレで上司と会ったりするのが恐かった」と語っています。
 ここで面談者の発言をいくつか紹介することにします。
応じる考えのないことを伝えても、「貴方の仕事振りからいって給料を払い過ぎている。来年もう一度話しましょう」
「貴方の仕事はありません。次回また話しましょう」
「貴方が会社に残ったとしても今後、今まで通りの給料がもらえるとは限らない」など。最後には、過去の仕事の失敗例まで持ち出して攻撃するなど、辞めさせるためには何でもありといったことが全国の職場で繰り広げられました。
 先日、組合が寄せられた相談内容の一部を公表しました。「面談において、現在の働き方に対する厳しい指導があった」「この会社で働き続ける意欲(自信)をなくしてしまった」など。ここからも面談がいかにひどいものであったか充分想像することができます。

■会社が恐れていたことが現実に、管理職がユニオンに加入
 面談が進む中で、NEC労働者懇談会や、電機ユニオンにメールや電話による相談が相次ぐようになりました。そこで判ったことは、東京・神奈川の4拠点で撒いたビラが他県の職場で働く人にまで廻し読みされていたこと。さらには、ELICNECホームページが九州にまで届いて見られていたことに驚くとともに、インターネットの威力・効果を思い知らされました。
 今年に入り、管理職Bさんから相談の電話が入ってきました。話を聞くと実にひどいものでした。面談者の発言は、紹介したものと似ていましたが、最後には「辞めるか、新会社に行くか選択しろ」といわれ、すでに3回の面談が行われ4回目も通告されていました。
 Bさんは、電機ユニオンに入って闘うことを選択しました。「窮鼠、猫を噛む」、まさに会社が恐れていたことが起きてしまいました。電機ユニオンは早期退職応募締切の当日、東京・本社人事部に退職強要を辞めさせるための「団体交渉要求書」を提出しました。
 3月3日に行われた交渉の中で会社は、「本人と将来の問題について話したということであり、本人が希望しなければ強制されることはない。団交時点ではどちらも締切られており、本人の希望に従って引き続き今の職場で働き続けることになる」と明言し、勝利のうちに終わりました。
 現在のリストラは、管理職も対象にされており、組合員でない彼らにとって頼るものがないために泣き寝入りするしかありません。そんな中での今回の出来事は、改めてユニオン(組合)の有効性を示すことができたといえます。

■難しくなったリストラ
 今回のNEC労働者懇談会の一連の行動が、会社と組合に与えた影響には計り知れない大きなものがあったということができるでしょう。
 事実、新会社への転籍250名による内工化で下期の外注(派遣・請負社員)250名と合わせて500名の削減が困難になりました。会社は、今回のような横暴なことをすると労働者は決して黙ってはいないことを充分認識したことでしょう。
 フィールディングの労働組合は、2月の職場代表会議で委員長が発言に立ち、「今後、同じ内容・形態で人員削減の提案があっても受け付けない」と明言しました。これもその現われといえるでしょう。

■終わりに
 今回の活動を通じての教訓は、労働者はやっぱり闘わないと生きていけないなあ。ということです。労働組合を作ったのは、なにも会社の施策を応援するためではないのですから、ただ一つ労働者を守るために存在するのですから。それを失ったら終わりです。
 


 
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